スポーツ指導者への提言

スポーツの指導者に求められていること

スポーツの監督・コーチ・部活動の顧問の教諭など、スポーツの指導者の皆様におかれては、「選手にスポーツが上手になってもらいたい」との思いで、スポーツ選手の指導やアドバイスを行っておられると思います。

そのようなスポーツの指導者に質問です。

スポーツ選手に対する指導やアドバイスを行うにあたって、どのような法律を意識していますか?

「いやいや、私はスポーツを教えているだけなので、法律なんて意識していないよ。」

「そもそもスポーツに法律は適用されないのではないか?」

と思った方々は大勢いらっしゃると思います。

しかしながら、もしそのような感想をお持ちだとすれば、将来、スポーツの現場において、何らかの事件・事故を起こすおそれがあります。

それは、スポーツの指導者でありながら、いまだに「自分はスポーツ選手である」という意識を持ち続けているからです。

例えば、試合中に対戦相手にけがをさせてしまったとします。

ボクシングや空手、柔道などはもちろん、野球でも死球によりけがをさせることもありますし、サッカーでは接触プレーによりけがをさせることもあります。

しかし、スポーツ選手は、原則として罪に問われることはありません。

それは、スポーツそのものが刑法第35条の「正当行為」に該当するものとして、違法性が阻却されているからです。

民事上の責任についても、違法性が阻却され、不法行為に基づく損害賠償義務が発生しないのが原則です。

ところが、スポーツの指導者は違います。

スポーツの指導者は、スポーツ選手との間で、スポーツの指導を行うという契約(スポーツ指導契約)を締結しています。

この契約に従い、スポーツの指導者は、スポーツ選手に対し、安全配慮義務を負っています。

安全配慮義務とは「ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務」と定義されています。

スポーツの指導者は、スポーツ選手との間でスポーツ指導契約を締結していることから、この契約に付随する義務として、スポーツ選手が事故やけががなく指導を受けることができるよう、安全に十分に配慮した指導を行わなければならない民法上の義務があるのです。

また、行き過ぎた指導によりスポーツ選手に対して暴力を加えた場合には暴行罪、けがを負わせた場合には傷害罪、死亡させてしまった場合には傷害致死罪に該当するため、刑事責任を問われることになります。

それだけでなく、スポーツ選手に対する安全配慮義務に違反した結果、スポーツ選手にけがや死亡などが生じてしまった場合には、業務上過失致死傷罪に問われることがあります。

このように、スポーツの指導者には、民法や刑法といった法律が適用される局面があるため、日頃から、これらの法律が適用されているということを十分に意識しておく必要があるのです。

つまり、スポーツの指導者に求められているのは、「コンプライアンス(法令遵守)」なのです。

監督・コーチは、スポーツ選手、特にスポーツを始めたばかりの子供たちに対し、スポーツのルールを教えるはずです。

その監督・コーチが、社会のルールともいうべき法律を守らないというのであれば、私は監督・コーチとしては失格であると考えています。

私は、弁護士として、指導者に対し、真にあるべき姿を追求していただきたいと切に願っています。

取り扱い内容

  • 監督・コーチなど指導者からの法律相談、示談交渉、訴訟代理など
  • 監督・コーチのコンプライアンスへの啓蒙のためのセミナー活動
Pocket
LINEで送る